いのちをいただくということ

木村まさ子さんの心に響く言葉より…




少し前のことになりますが、給食の際に、
なぜ「いただきます」「ごちそうさま」を言う必要があるのかという声が一部の父兄から上がり、
問題になったことがありました。


給食費を払っているのだから食べるのは当然の権利。
そんな言葉を言う必要がないというのが、親たちの言い分です。
「いただきます」「ごちそうさま」と子どもに言わせるのは、
宗教教育だからやめてほしいという父兄まで出てきました。


こうした“騒動”に、学校の先生方は困り果てました。
「“いただきます”とは、動物や植物そのもののいのちをいただくということ。
いのちをいただくことで、自分のいのちを永らえさせていただくという感謝の言葉です」
と思われた先生もきっといたことでしょう。


でも、どうしても父兄は納得しなかったようです。
そこで驚くべき結論を出し、それを実行した学校がありました。
「いただきます」という代わりに、笛を吹くことにしたのです。
先生が「ピー」と笛を鳴らすと、子どもたちはいっせいに食べ始めます。


「いただきます」の言葉には、感謝する心、思いやる心、想像する心など、
目に見えない大切なものを育む力があると思います。


食べ物は“餌(えさ)”ではなく、食事はものを食べる訓練とは違います。
これでは心が育つはずがありません。


『古くて新しい奇跡の言葉「いただきます」』青春出版社






木村まさ子さんは、タレントの木村拓哉さんのお母さんだ。
今は講演活動が中心だが、以前はレストランを経営していたので、食に対する思いは強い。


外国には、「もっと召し上がれ」、「食事を始めます」、「おいしかった」、
というような言葉はあるが、「いただきます」に相当するような言葉はないという。
つまり、何をいただくのかが、はっきりしないということなのだろ。


仏教に「悉有仏性(しつうぶっしょう)」という言葉があるが、
あらゆるものには仏という「いのち」が宿る、ということだ。


山川草木(さんせんそうもく)悉有仏性、ともいう。
山や川、草や木にもすべて仏性があるという考え方は、
日本人の自然観をあらわしていて、むしろ神道に近いのかもしれない。


つまりそれは、太陽や水や、自然の恵みに感謝することであり、
それが「生かされている」という謙虚な気持ちに通じる。


食べることは、動物や植物の「いのち」をいただくこと。
食事の前には、「いただきます」と感謝の言葉から始めたい。










「いただきます」は感謝の言葉|人の心に灯をともす