叱り方はもっとシンプルにして、最後にはちゃんと許してあげないと・・・

 周囲をはばからぬ剣幕で怒鳴り散らす女性もいるが、私が気になっているのは懇々と言い聞かせるタイプの母親である。

 あまり注視していては煙たがられそうで、歩く速度を落としながら聞き耳を立てているのだが、やがて母親たちの叱り方が似ていることに気づいた。

 2〜3歳の年端のいかない子供に向かって、「どうして約束を守れないの」と圧し殺した声でしつこいくらいに問いかける。子供はすでにべそをかいているが、母親は許そうとしない。

 「だって、おかあさんとちゃんと約束したでしょ」

 念を押されて、子供が体を震わせながら首を上下に動かすと、母親はそれみたことかと畳みかける。

 「じゃあ、どうして約束を守れないのよ。おかあさんは赤ちゃんの乳母車を押さなくちゃいけないから、あなたに遠くに行かれたら困るの。それくらい分からないの」

 どうすれば許してもらえるのか分からなくなった子供は大声で泣きだすが、母親は最後まで許そうとしないまま乳母車を押して歩きだし、子供はわめき声を上げて後を追う。

 そうした場面に出くわすと、「どうして約束を守れないの」と子供を問い詰める母親に向かって、「おかあさん、それは無理です」と、私は危うく声をかけそうになる。

 子供は忘れっぽいのだし、おかあさんが赤ちゃんばかりをかまうので、自分のことも見てもらいたくて、つい余計なことをしてしまうんです。それに、叱り方はもっとシンプルにして、最後にはちゃんと許してあげないと・・・。











子供を叱る若い母親に言いたい、「お母さん、それは無理です」  JBpress(日本ビジネスプレス)