スエーデンボルイの思想である


サミュエル・ハーネマン(Samuel Hahnemann): 極東ブログ



その他、嘔吐剤や発汗、皮膚火傷で水疱を作るといった治療もあった(参照)。耐えるほうも英雄である。ワシントンは瀉血以外にそうした治療も受けていた。
 こんな医療でよいのだろうかと、正統医学に疑問をもった人もいた。科学的な医療に疑問を持つことなど、近代理性の時代、許されるわけもない。当然、薬草を使った治療などは魔術や呪術の類に扱われた。
 サミュエル・ハーネマンも、こうした医療に疑問を持ったのだった。悩んだ。そして医者を辞めて、得意な語学を活かして翻訳家で食いつなぐことにした。それと、サミュエルには、当時流行の思想の影響もあった。日本では鈴木大拙訳で紹介されたスエーデンボルイの思想である。そこでは、癒しとは神と自然の技とされていたのだった。
 翻訳者としてサミュエルが最初に着手したのは、スコットランドの化学者ウィリアム・カレン(William Cullen)が記した「A Treatise on the Materia Medica(薬物論)」のドイツ語訳であった。翻訳をしながら、サミュエルには疑問が浮かぶ。これらの薬物は臨床で利用されたのだろうか? 少なくとも健常者にどのような薬理作用をもたらすかという知見があってしかるべきではないのか? それでは、とサミュエルは思うのだ、まず、手始めに自分の身体で人体実験。冗談ではない。
 マラリア対処に利用されるキニーネ参照)のもとになるキナの木の皮を飲んでみた。苦み成分で健胃剤であろうと医学を極めたサミュエルは思っていた。が、実際には、熱が出た。な、なにゆえ?
 それからいろいろ試してみた。薬物のよからぬ作用はその薬物が適用される病状に似ていると思うようになった。もしかして、逆に特定の病気については、類似の症状をもたらす薬物を施せばよいのではなかろうか? 古代から伝わる秘密、引き寄せの法則みたいなものである。
 そういえばとサミュエルは思うことがあった。薬物投与をすると、一定の効果の後に逆の症状が出る。例えば、アヘンを投与すると多幸感になるがしばらくすると逆に抑鬱状態になる。これは、もしかして、人間の身体が薬物の影響を均衡させようとする仕組みを持っているからではないか。
 であるなら、サミュエルは考え続けた、病気に抵抗する自然治癒的な力を引き出すように類似症状をもたらす薬物を投与すれば治療になるのではないか? 1796年、ドイツの医学誌にこの知見を発表し、1810年、「Organon der rationellen Heilkunde(医療技法の原理)」を著し、新しい医療を提唱した。
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