日教組全体がそうだと決めつけるのはいささか乱暴だろう
2010/03/15 14:19更新
民主党の小林千代美衆院議員(41)の陣営が北海道教職員組合(北教組)の幹部らから違法な資金提供を受けていた事件をきっかけに、日教組とは何かが改めて問われている。教員の組合がなぜ、強い政治性・党派性を帯びた活動を展開し、過激な反日イデオロギー教育を行うのか。それを考える一つの鍵が、12年間にわたり委員長を務めて日教組の闘争路線を主導し、「ミスター日教組」とも呼ばれた槙枝元文氏(89)という存在だ。
■北朝鮮との深い関係
一、朝鮮に対する制裁措置を解除すること。日朝実務者協議で合意した人的往来と航空チャーター便の制裁解除はもとより、在日朝鮮人の祖国往来の自由を侵害している万景峰(マンギョンボン)号の入港禁止を解くこと。
二、6者協議に拉致問題を持ち込むことをやめて、「合意」に基づいた経済支援に踏み出すこと。
三、日朝国交交渉を再開して、平壌宣言に基づく国交正常化に取り組むこと。
2008年12月、当時の麻生太郎首相と中曽根弘文外相あてに届いたある要請書は、政府に一方的に北朝鮮に歩み寄るよう求めていた。「朝鮮の自主的平和統一支持日本委員会」という親北団体が発出したもので、議長を務めるのが槙枝氏だ。
槙枝氏と北朝鮮との関係は、深く長い。
1991年には北朝鮮の親善勲章第1級を受章したほか、98年4月に喜寿(77歳)を迎えた際には金正日(キム・ジョンイル)総書記からお祝いを受けている。2001年3月には北朝鮮創建52周年祝賀宴に招かれ、02年2月には金正日総書記誕生記念祝賀宴にも出席した。訪朝も何度も繰り返している。
記者は1995年に槙枝氏にインタビューしたことがあるが、その際には「教育荒廃の責任は、半分は日教組に、半分は文部省(現文部科学省)にある」とあっさり日教組の罪を認めた。
そんなにあっけらかんと語るセリフかと驚いたのを覚えている。槙枝氏の目線は、初めから生徒・児童の教育よりイデオロギー闘争の方を向いており、自分でもそれをよく分かっていたのかもしれない。
■拉致問題には冷淡
槙枝氏は著書や論文で「わたしは訪朝して以降、『世界のなかで尊敬する人は誰ですか』と聞かれると、真っ先に金日成主席の名前をあげることにしています」「この国(北朝鮮)には泥棒がいない。泥棒の必要がないのである。泥棒も殺人犯もいないから、警察官もいない」などと北朝鮮を礼賛している。
一方で、北朝鮮の行為によって同胞である日本人が塗炭の苦しみを味わっている拉致問題については、ひたすら冷淡だ。
04年6月にも、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の第20回全体大会でこうあいさつしている。
「朝鮮に対し加害者だった日本は戦後、謝罪、補償もせずに拉致問題を掲げ、植民地支配の過去精算を放置してきた」
まるで日本には、拉致問題の解決を迫る資格はないと言っているかのようだ。
槙枝氏が北朝鮮のシンパだからといって、日教組全体がそうだと決めつけるのはいささか乱暴だろう。とはいえ、日教組はこれまで何度も組織として訪朝団を送っており、そのたびに支援カンパ100万円を贈呈したり、友好連帯の合意書を交わしたりしているのは事実だ。
各都道府県の単組によって思想的に過激な武闘派と穏健派とがあり、一様ではないが、日教組教師に北朝鮮の革命歌「白頭山の歌」を歌わされた生徒もいるという。異様の一言だ。
鳩山由紀夫首相(63)はこうした日教組の実態を直視し、北教組事件を奇貨として日教組と民主党とのつながりを断ち切るべきではないか。
(政治部 阿比留瑠比(あびる・るい)/SANKEI EXPRESS)