(利益率6.5%) その鍵を握っているのが、エリアマネージャー


50年連続で増収を続ける驚異のドラッグストア「サンドラッグ」(まとめ)



創業以来、50年連続で増収を続ける驚異のドラッグストア。

それこそ東京西部地区で生まれた業界大手の「サンドラッグ」だ。

「モノが売れないーーーーーーーー」

そんな消費不況が深刻化する2008年度決算でもサンドラッグは増収増益!

そのサンドラッグ最大の特徴は、ずばり “激安”にある。

薬はもちろん、生活必需品や菓子のほか、業界では大幅値下げが不可能と言われた化粧品が3割引。

30代〜40代の主婦層の間で、熱狂的なファンが生まれるほどの人気を博している。

だが、人気の秘密は“安さ”だけではない。

実は、サンドラッグは“激安店”なのにサービスの良さでも客のココロを掴んでいる。

これを実現させたものこそ、才津社長が考案した「1店舗2ライン制」だ。

サンドラッグには、店の快適さ、

秒単位で作業のムダをなくすことを仕事とする「運営責任者」と、

もう一人、高い専門性や親切さでリピーターを生み出す「接客責任者」の2人の責任者がいる。

一見、ムダに見える、このシステムを導入することで、サンドラッグは経常利益率6.5%を達成。

業界最大手のマツキヨ4%台を大きく上回り、リピーターも多いという。

<会社概要>

株式会社 サンドラッグ

創 業:1957年(昭和32年)

本 社:東京都府中市

事 業:ドラッグストアチェーン経営・調剤薬局経営

資本金:39億3120万円

売上高:2325億3200万円(21年3月期連結)

店舗数:598店舗

(以上、カンブリア宮殿オフィシャルより引用)



サンドラッグは、激安なのに、業界トップクラスの利益率(6.5%)。

本社は東京・府中市。

お客様とのコミュニケーションを大事にしながら、効率的な経営を実現。

合理化と高いサービスを両立するしくみを作った。

それが「2人店長制(1店舗2ライン制)」。

サンドラッグは、薬だけでなく、肉や野菜以外の食料品や化粧品、生活必需品なども取り扱っている。

ゆえに、カゴいっぱいに買い物をする人が多い。

「買い物が一回で済む」

「米も日用品も買えるし、お酒も買える」

この品揃えが、サンドラッグの人気の一つ。

そして、最大の特徴であり、人気の要因が激安。

競合店を徹底調査して1円でも安くお客様に提供できるようにしている。

この2つで主婦の心を鷲掴み。

サンドラッグは、50年連続で増収を続け、2009年には売り上げ2325億円に。

ちなみに、主要ドラッグストアの2009年度連結決算は以下の通り。

1.マツモトキヨシ 3922億円(利益率4.5%)

2.スギ薬局 2721億円(利益率4.9%)

3.ツルハ 2518億円(利益率4.5%)

4.カワチ薬品 2339億円(利益率3.5%)

5.サンドラッグ 2325億円(利益率6.5%)

サンドラッグ才津社長は、上場前からいつもラフな格好をしている。

取材当日もジーンズを履いていた。

会社に着くなり案内された自慢の場所は男性トイレ。

掃除の回数を減らすしくみがあると言う。

そのしくみとは、、、便器に段差があること。

便器から離れると後ろにのけぞってしまうため、自然と前に出る。

そのお陰で、便器の周りに飛び散ったりしなくなり、掃除の回数が1/5で済んでしまう。

貼り紙を貼ったりするのではなく、

「放っておいても、そうせざるを得ない、誰でも習慣みたいにできるようにする。

それが「仕組み(システム)」だと思っている」

才津社長は、そういう仕掛け作りが大好き。

その集大成がサンドラッグの店舗である。

●仕掛け1〜能力に応じた作業分配で最少人数で効率的に

サンドラッグでは、秒単位でスタッフのスケジュールが決まっている。

例えば欠品再チェックは、18.4分(18分24秒)とか、

前日の売上高計算は3分で終わらせる、とか、

釣り銭の準備は11分とか、現像写真の仕分け作業が5分とか。

例えば開店前の作業について、

<社員>

 ・釣り銭準備

 ・レジ立ち上げ

 ・商品仕分け(店内レイアウトを熟知した社員が適切)

<パートA>

 ・店内掃除

 ・灰皿処理

<パートB>

 ・品出し

 ・はたきがけ

のように、それぞれの能力に応じて作業を分配し、スケジュールを立てている。

商品仕分けは、店内レイアウトを熟知した社員が最適。

なので、社員はケースに仕分けをしていき、棚の前にケースを置いておく。

そして、その後の作業(品出し)は、

レイアウトを熟知していないパートでもできるので、パートが行う、

といった具合に、能力に応じて非常に合理的に作業が分配されている。

また、掃除一つをとっても、

「トイレ」「駐車場」「売り場」など分けて考えていて、

細かく分けていくと、定番の作業が200近くになるという。

それ以外にも、週一回、月一回という作業が60項目程度ある。

これらを、全て秒単位、分単位で振り分けているが、

一律ではなく、店の売り上げや入荷される荷物量によって都度計算している。

これにより、最小限の人数で効率的に作業ができるようになっている。

そして、人件費などの販売管理費は、同業他社に比べて低く抑えられている。

<販売管理費>

・業界平均 20%

・サンドラッグ 17%


●仕掛け2〜効率を追求せず、サンドラッグのファン(効果)を作るための接客

もう一つの仕掛けが、薬剤師の役割。

薬剤師は、一般スタッフのようなスケジュールがない。

薬剤師の役割は、作業の効率とは対極にある役割、

「サンドラッグのファンを作ること(接客)」である。

「利益に繋がらなくても、いい接客をしたことで、このお店の薬剤師に相談したいなと思ってもらえるような接客をしてます(薬剤師)」

「話を伺いたいときにすぐに対応してくれますので。ですから、気持ちがいいですよ、こちらも。分かりやすいですしね。納得して買えますので(客)」

この2つの仕掛けを、一店舗につき、2つの責任者をおいて実施することで、合理化と高サービスを実現している。

しかし、スケジュールの作成は、

元々作業効率を上げるために始めたことではなく、

数値目標のないスタッフの評価をするために、

どのような作業が苦手で、どのように教育をすべきか、

ということを把握するために作業表を作ったのが始まり。

結果的に、仕事の振り分けに繋がり、作業が効率的になった。

また、そのお陰で薬剤師の接客時間を確保することが出来るようになり、

接客に多くの時間をかけられるようになった。

●一店舗2人店長制のポイント(得意なことで人を育てる)

・店舗責任者:効率

・薬剤師の責任者:効果

スーパーマーケットのようなセルフサービスの業態であれば、

普通のシステムでもいいと思う。

しかし、ドラッグストアなので、

「痛い」「かゆい」「疲れた」などという症状を

いかに早く治してあげるかが仕事。

そして、そういう仕事の場合、

優しい人の方が向いている。

逆に、店舗運営のような仕事の場合、

どちらかというと「オレがオレが」みたいな積極的な方が向く。

昔は器用に出来る人が比較的多かった気がするが、

才津社長が営業部長くらいのときから、

器用に出来る人が少なくなった。

その人の得意なもので最初はやっていった方が、

早く自信が持てるし。

この2つを両立させられるのは、

才津社長の感覚では30人に一人くらいしかいない。

だから、一人に任せようとすると、

合理化(効率)と高サービス(効果)の両立は難しい。

しかし、例えば店舗運営では、6割が高いレベルになる。

やるべき課題が少ない方が、結果も出やすい。

●才津社長「褒められるから、仕事は楽しい」

才津は、「無試験」「東京」という条件で就職先を見つけてもらう。

それが、新宿のドラッグストア。

一部の薬局で始まった大衆薬の安売りに殺到する人を見て、

安売りで人気を集めていたサンドラッグに転職をする。

転職後、サンドラッグの店舗拡大に尽力する。

開店前日に看板を壊されたり、業界の圧力で出店が出来なかったり、

地域の薬局オーナーに呼び出されたり、苦労の連続だった。

しかし、呼び出しをくらった会合で見せられた、

「安売りはしない」「夜7時で閉店すること」「定休日を設けること」

などの、薬局が得をする、薬局都合の規約(ルール)を見せられ、

「この人達とは違い、お客様に得のすることをすればいい(顧客重視)」

と進むべき道を見いだした。

また、才津社長の転機になったのは、

「お前、仕事が早いな」と褒められたこと。

それまで、親や先生にも褒められたことがなかったので、

ものすごく嬉しかった。

それ以来、仕事が楽しくて楽しくて仕方がない。

社会に出てから今まで、毎日が楽しくて仕方がない。

難しい問題にぶつかると嬉しくなる。

しかし、自分が作ったシステムについては、

いつも「これでいいのか」疑っている。



●激安なのに高い利益率のヒミツ

サンドラッグは、ダントツの利益率を誇る。

1.マツモトキヨシ 3922億円(利益率4.5%)

2.スギ薬局 2721億円(利益率4.9%)

3.ツルハ 2518億円(利益率4.5%)

4.カワチ薬品 2339億円(利益率3.5%)

5.サンドラッグ 2325億円(利益率6.5%)

その鍵を握っているのが、エリアマネージャー。

エリアマネージャーは、

常に他店の動向を探り、掲示価格などの指示を出している。

取材当日は、店頭に並んだ「手間なしブライト」をめぐり、

目の前のライバル店との値下げ合戦を続け、

88円から49円まで値下げをした。

もちろん、利益は出ない。赤字。

それでも利益が出るヒミツは?

<サンドラッグ流の販売テクニック>

1.「ついで買い」で利益を出す

まずは人目に付きやすい店頭の陳列棚がポイント。

サンドラッグでここに並ぶのは、赤字覚悟の目玉商品。

しかし、サンドラッグの本当の狙いは、その棚の隣にある。

ここには、リップクリームなどの季節商品が並んでいるが、

実は利益率の高い商品が並んでいる。

”粗利ミックス”

目玉商品で引き寄せ、

巧みに利益率の高い商品「ついで買い」を誘い、

利益をだす。

「半分は目的買いで、半分は衝動買い(客)」

2.「お得感」で利益を出す

消費者心理を突くサンドラッグの仕掛けは、

さらに細かいところまで計算されている。

それが、一見普通に並んでいるように見える、

商品の並べ方。

例えば、売れ筋のナショナルブランドの商品を

赤字覚悟の値段で並べ客の関心をひき、

その横の比較しやすい位置に利益が出せて、

見た目にも安い商品を並べる。

取材当日の場合、

売れ筋商品である

 「ビッグセール 花王の石鹸 185円(赤字)」(3個パック)

の隣に、

利益がでる商品

 「お買い得商品 植物石鹸 4個パック 98円」

を並べていた。

この並べ方をするだけで、

客の多くが利益を出せる安い商品を買っていく。

そのためには、客が

「いつの時期に」「どういうものを使うのか」

「これを使う時に何を一緒に使うのか」

細かなデータで分析する。


●サンドラッグが作る新しいドラッグストア「かかりつけ薬局」

それが、高齢者向け店舗。

大きな相談カウンターがあって、

立ち話が難しい高齢者の足腰に負担をかけないようにしている。

また、そのカウンターでは、

様々な相談に応じつつ、

血圧を測ったりもできるようになっていて、

薬剤師が顧客のカルテまで作成している。

「いいですよね。いつも薬剤師がいて、

 私の顔を見ると声をかけてくれる」

 

大衆薬の販売で、町の「かかりつけ薬局」を目指すサンドラッグ。

今後、さらに他業種の参入などもあるが、

薬局を客が選ぶポイントは、

「来やすさ」「入りやすさ」が大事。

その次に重要なのは「品揃え」。

欲しいものが欲しい時期にあること。

なおかつ、それらが「買いやすい値段」であること。

あとは、「快適さ」。接客が非常に丁寧である。

カルテを作って薬の重複などを教えてくれる「専門性」。

それら要素のバランスで客は店を選ぶ。

その一つ一つが、日本人の場合は、全部が80点以上でないとダメ。

どこかひとつ90点でも、他が60点だと「いい店」とは言ってくれない。

日本人は完璧主義で、そこが一番難しい。

カンブリア宮殿(2009.10.19)