裁判で、自らの主張を認めてもらうことが、どれほど困難なことか分かる

年金形式の保険に対する二重課税判決。納税に関する提訴で勝つ可能性は極めて低いが、女性は国を相手に勝訴した。


 遺族が生命保険金を年金として受け取る場合、相続税と所得税の両方が課税されるのは、「所得税法で禁じられた二重課税に該当する」として争われ
た裁判の判決が、7月6日、最高裁であった。判決で裁判長は、「違法な二重課税にあたる」との判断を示し、課税を適法とした2審の判決を破棄し、所得税の
課税処分を取り消した。


 訴えていたのは長崎市に住む女性(49)。女性の夫は死亡保険金が2300万円の生命保険に加入していた。この保険は、保険金を毎年230万円
ずつ10年間、年金形式で受け取ることのできる特約付の生命保険だった。


 所得税法では「相続によって取得したものには所得税は課さない」と規定しているが、国税当局は1968年に「年金方式で毎年受け取る保険金は、
相続財産とみなさない」との法解釈を示し、40年以上にわたり、相続した時点で相続税を課し、また毎年の年金に対して所得税を徴収してきた。


 今回の判決は当然だと思われるが、一般的には、行政相手の裁判では勝てる可能性は極めて低い。「国税庁レポート2010年度版」によると、平成
21年の異議申し立て処理件数4997件のうち、納税者の請求が一部でも認められたのは、約11.8%となっている。訴訟においては、320件中わずか
5%だ。


 この数字を見れば、納税に関する行政相手の裁判で、自らの主張を認めてもらうことが、どれほど困難なことか分かる。しかも主婦の主張は、国税当
局が40年以上にわたり「妥当と判断している解釈」を不服とするものだ。裁判を起こすなど、無謀といっても過言ではない。それでも女性は税理士らと裁判を
続け、勝利をもぎ取った。


 今回の判決を受けた野田佳彦財務相は、過大に徴収した所得税を還付する方針を明らかにした。さらに、税法上は時効を迎えている5年を超えた分に
ついても、還付に応じる姿勢を示している。


 国はなんとか税収を上げようと努力する。だからこそ、争っても負けないと判断すれば、強気で攻めなくてはならない。しかし、裁判を続けるには、
かなりの資金と労力、そして勇気が必要になる。裁判を終えて、「同じ立場の方たちのためにもお役に立ててよかった」と語る女性に敬意を表したい。










[mixi] 「勝てない」が通説の国税庁相手の裁判に勝利した女性(MONEYzine)

相続した年金方式で毎年受け取る保険金には所得税を課さないという判決になったようです。